米国での同時多発テロ2
(2001年9月20日、財団法人 中東経済研究所)
米国における同時多発テロ事件に対する中東諸国の反応(2)
■日本時間9月15 - 19日ごろまでの報道
(編者注:日本時間9月19日昼までの報道をまとめたものが本ページである。本ページ上で米国に批判的な指摘として引用されている箇所であっても、原文ではそれはテロを非難した上での対米批判であることを、あらかじめ付け加えておく。編集時点でテロを賞賛する発言や犯行声明を集めることはできなかった。:編者注終)
米国政府は、テロリストは、普段は我々が生活している社会の一員として隠れながら国際的なネットワークを構築しており、これに対抗するためは、この分野で国際的な協力体制を築くことが必要だとして、国際的な反テロ連合(anti-terrorism coalition)を構築することを呼びかけた。
反(イスラム過激派)テロは大いに結構とする意見
この米国の呼びかけに対し、ここ数年、国内でイスラーム勢力と流血事件を繰り返している国々から早速、賛成意見が表明された。
- ロシア:チェチェンとの戦い。ロシア政府は以前から、サウジのイスラーム教であるワッハーブ派が支援していると指摘している。
- アルジェリア:イスラーム武装グループ(GIA)との戦い。al-Hayat (2001.09.17)は、アルジェリア政府が自国民の過激派350人のリストを米国政府に渡したことを明らかにした。
- イスラエル:パレスチナ自爆テロとの戦い。
- ヨルダン:マネーロンダリング防止策を強化することは良いことだ(Washington Post, 2001.09.18)。(注:裕福な湾岸アラブ人がイスラーム慈善団体に寄付した金の一部が過激組織に流れることがあると、指摘されている。特にヨルダンの場合は、人口の6割以上をパレスチナ人が占めていることもあり、日頃からハマース等の活動に神経を尖らせている。)
米国の反テロ連合設立の呼びかけに対し、イスラエルは真っ先に手を挙げた。しかし、米国、イスラエルの間で、意見のすり合わせができていないように見受けられる。イスラエルの主張の要点は以下の通りである。(Jerusalem Post, 2001.09.14) (Washington Post, 2001.09.18)
- イスラエルは、これまで(パレスチナ)テロとの戦いで自ら血を流してきた国である。イスラエルは反テロの重要性を最も認識しており、反テロ連合に原加盟国として参加するのが当然である。
- 米国は、反テロを掲げてなるべく多くの国を取り込むべく各国と接触し始めたが、反テロ連合の内側にイスラエル、パレスチナ、シリアが同居するのは困る。アラファトの(テロ)行為が正当化されてはならない。
- 1990年湾岸危機の時には、イスラエルは反イラク連合に属していたが、アラブ内の反イラク結束を重視した当時の米国から、イスラエルは目立つ行動を取らないよう強く指示され、それに従った。この結果、湾岸戦争ではイスラエルが弱者として受け止められた。イスラエルの強硬派は当時の経験を苦く感じており、今回、同じ失敗を犯してはならないと決意している。
9月16日付けJerusalem Postは、中東和平を元の路線に戻すため、イスラエルに対しパレスチナと協議するよう求めるパウエル米国務長官の調停を、「理解できない」「(ブッシュ大統領はテロを容認しない姿勢を明確にしているのに対し、)パウエルはイスラエルに対し二重基準である」と不快感を表明した。
トルコはEUの対PKK政策に変化を期待
9月17日付けTurkish Daily Newsは、アンカラ駐在の匿名ヨーロッパ国大使の発言として、以下を紹介した。
- トルコはPKKをテロ組織であるとして、その取り締まりをヨーロッパ諸国に対して要求してきた。
- ヨーロッパは、テロは許さないが、非民主主義である外国の中には、一つの政治表現の方法としてテロがあり得ると定義している。別の表現をすると、これまでヨーロッパの間では、トルコは非民主主義国とされてきたため、PKK取り締まり要求は受け入れられなかった。
- しかし、米国であのような惨劇が発生した以上、ヨーロッパは、取り締まりの対象を平和的なデモ実行者たちにも広げる必要を認識せざるを得ない。
- (米国の報復攻撃に話題を変え)もしNATOが実際に集団的自衛権を行使するときには、欧州は米国に対し、敵であることの証明を求める。
同じ記事の中で、この発言を行った大使は、トルコはムスリムから構成される穏健世俗国家であるから、(テロ容疑がムスリムに向けられている)今こそトルコが堅固な対応を示すべきだとも指摘した。
Ilnur Cevikは9月17日付けTurkish Daily Newsで、ビン・ラーディンのような人々はハーグの国際戦争犯罪法廷で裁かれるべきであるとの考えを示した。ヨーロッパ諸国の反対でPKK指導者オジャランを裁くことが出来なかった例を引用して、それを実現するためには国際協調が必要であると付け加えた。同氏はまた、失われた米国人の生命のために復讐することは、爆撃ではないと述べた。
米国国務省がアラブの駐米大使に協力要請
バーンズ近東担当国務次官補が9月14日(金)、サウジ、バハレーン、クウェート、オマーン、カタル、UAE(以上GCC 6カ国)、エジプト、シリア、パレスチナなど15カ国の駐米大使を集め、対米協力を要請した。New York Timesの報道によると、「どちらの側に付くか決めなさい」というメッセージの伝達だった。同記事によると、国務省は全ての在外公館に対し、任国が反テロ連合に加盟するために必要とされる条件のリストを指示した。アラブ大使らに対して、条件達成の期日を指定することはなかった。まず、米国の協力要請内容の詳細は明らかにされていないが、国務省高官によると以下を含んでいる。
- 国内のテロリストを逮捕する。
- 国内のテロリストを起訴する。
まず捜査報告書を持ってきなさい、とエジプト
これに対し、エジプト大使は、目的不明の連合を作っても機能しない、地理的に関係のない地域を巻き込むべきでないと指摘し、米国の捜査当局が、まず犯人を十分に特定する努力を行うよう要請した(前出のNew York Times)。また、ムバーラク大統領は9月17日、米国の現在のプランは世界を二分するものであり、反テロ連合を結成するより、国連主催の反テロ国際会議を開催し時間をかけて問題を討議することの方が賢いと力説した。(Egyptian Gazette, 2001.09.18)
パレスチナ問題のことも考えて欲しい
バーンズ国務次官補からの要請は、FBIが数人のアラブ人容疑者を逮捕し、ブッシュ大統領が、テロリストはもちろん、テロリストを匿う国家をも追求すると演説した後のタイミングであるだけに、アラブ大使の間で動揺が広がった。現段階ではアラブ系容疑者数名が逮捕されただけで、事件の全体像は解明されていない。この段階で反テロ連合を組んだ場合に予想されるいくつかの問題点について、アラブ大使は懸念を表明した。
- サウジの9月15日付けArab News紙は、アラブ・ムスリム政府(複数)も反テロ連合に関与するだろう。しかし一つ明確にしなければならないことがある。ワシントンは過去50年にわたり、イスラエルのテロによるパレスチナ、アラブの被害を無視してきた。
- エジプトのムバーラク大統領は、「世界中のムスリム、アラブ人が不満に感じていることの中心が中東にある。イスラエルは、米国が供与した武器を使ってパレスチナ人を殺している。その行為が残虐であるにもかかわらず、米国は、イスラエルに対し無条件の精神的、政治的支持を与えている」と厳しく指摘した。(Egyptian Gazette, 2001.09.18)
- アラブ首長国連邦のザーイド大統領は、テロ行為を非難する一方、NATO、ロシア、中国に対し、中東和平を永続的、公正な解決に導くための(反テロ連合と)平行した連合を結成するよう呼びかけた。(WAM, 2001.09.18)
- 「我々は現実を認識しているが、この反テロ連合のどこに身を置いたらよいのか」(パレスチナの駐米大使)(Washington Post, 2001.09.18)
結局、アラブ側はその場で最終的な対応を決めることはできず、大使らは9月16日(日)、サウジの駐米大使宅に集まり、対応について協議した。集まった国はシリア、パレスチナ、アルジェリア、レバノン、GCC 6カ国、エジプト、ヨルダンの12カ国。議論になったいくつかの論点は以下の通りである。(Washington Post, 2001.09.17)
- テロの定義が、自国が安心できない領域まで拡大された。(ある大使発言)
- この機会を利用して、米国はイラク政権を転覆するのではないか。
- 対イスラエル闘争を続けるパレスチナ・グループへの影響はどうなのか。
- これはテロリズムに関する文明の衝突だ(ヨルダン大使)
- (アラブの)人々は、アラブ、ムスリムが標的でないことを確認したい。先日の会談で、バーンズ国務次官補は、反テロ戦争が反アラブ、反ムスリムではないと語った。(ある大使)
アラブは慎重な捜査を要請
アラブ大使関連の記事とは別に、アラブやイランのメディアから、米国が過去に実行して失敗した作戦を紹介し、事件の捜査が結論に達していない段階でアフガン空爆の話が浮上する米国の報道ぶりを危惧する指摘がなされた。
たとえば、9月15日付けEgyptian Mail紙上で、ムハンマド・イブラーヒームは次のように論じた。egypt
- 1993年の世界貿易センター爆破事件の時、米国は、アフガニスタンとスーダンが支援するアラブ原理主義者を逮捕した。
- (1995年の)オクラホマシティー連邦政府ビル爆破事件では、米国メディアは犯人はイスラーム原理主義に違いないと騒いだが、(2日後に)犯人が米国人であることが判明した。
- だから、中東の人々は、事件があるとすぐに(中東人が)非難されることに驚くのだ。
- 米国は1998年にアフガニスタンとスーダンに懲罰的空爆を行った。対アフガン空爆は効果がなかった。対スーダン空爆は(国連の援助で建てられた医薬品工場を破壊し)不法で、軍事的に見て非防衛的だった。
- イラクに毎週空爆を実行していることは、逆にサッダーム・フセインを英雄にし、米国を憎しみの対象とした。
- 米国は、イラク、リビア、イラン、スーダンをテロ支援国として制裁を加えた。結果は、既に困っている人々に対し、さらなる苦痛を与えた。
- ワシントンは、中東のみならず、ほとんどの場所で対立問題を抱えている。例えば、麻薬カルテル、セルビア人、日本のヤクザ、ロシアのマフィア、米国白人の民兵組織など、米国の血を欲している人は沢山いる。
- 米国がイスラエルを盲目的に支持するほど、テロに走るグループを助長する。
ほかにも、証拠を伴わない議論、ないしは犯人個人を糾弾するのではなく犯人と同じ国籍、宗教の人々をまとめて糾弾する報道ぶりを批判する記事が多数掲載された。例えば(Iran Daily, 2001.09.15)、(SPA, 2001.09.15)など。
Iran Dailyは、関連していくつかの疑問点を指摘した。
- ビン・ラーディンの直接関与の有無にかかわらず、米国内に共犯者がいると考えるのが自然だ。(だから、すぐに外国を非難するのは適切でない、という意味か?)
- ビン・ラーディンが、この規模の犯行を実行する資源を持っていたとは信じがたい。
- ビン・ラーディンの資金移動を捉えることが出来ないというのも奇妙なことだ。
ビン・ラーディンを育てたのは米国でしょ
米国政府が事件の背後にいると見ているビン・ラーディンは、保坂修司氏がまとめている通り、米国が対ソ工作支援のため手名付けた人物であることは専門家の間ではよく知られており(参考:オサーマ・ビン・ラーデンのつくりかた)、米国が取っている一連の行動を批判する指摘がなされた。例えば、Tehrain Times (2001.09.15) Daily Starなど。
米国内からも「急いては事をし損じる」
New York TimesのAnthony Lewisは9月15日付け紙面で、次のように指摘した。
- 我々に戦争が宣言された、とするブッシュ発言は正しい。
- しかし、実際に報復軍事行動を取ると、深刻な問題、極度に深刻な危険が発生する。
- 米国の情報機関はビン・ラーディンがどこにいるのか知らないようだ。「どこを攻撃するのだね?」
- ソ連が1979年にアフガニスタンを侵攻したとき、米国は抵抗勢力としてイスラーム勢力を武装させた。この国は結局、反西側イスラーム過激派の手に落ちてしまった。アフガンは典型的な(米国外交の)失敗例だ。
ハーバード大学のテロ専門家Jessica Sternは9月15日付けWashington Postで次のように述べた。
- 迅速な反撃は、敵が将来攻撃することをあきらめさせることよりも重要でない。
- 実行犯を罰することはできないのだ。彼らはもう死んだ。
- 私がインタビューしたアフガンの戦士たちは、トマホーク(巡航ミサイル)のことを、敵と直接接し、目を見て戦うことを恐れる臆病者が使う兵器だと語った。
- これは、外交、情報、(敵が判明すれば)軍事攻撃と多方面から対処すべき戦争である。
- 医療、教育、経済開発により多くのプライオリティーを与えなければ、新たなビン・ラーディンが出現する。
Washington PostのWilliam Raspberryは「もっと悪くなる」と題する論説で、次のように述べた。
- ビン・ラーディンを取り除いた後も問題が解決しなかったとき、事態は悪化する。
- ブラウン大学の中東専門家のビン・ラーディン評価は、彼はイスラームの聖地から米国を追い出したいのであって、さほど反米ではない。
- (イスラーム)地域から米国の権益を完全に追放するという要求は飲めそうにない。
- しかし、そう感じている人が多く存在して、しかも、盛んに報道されているようにビン・ラーディンの分子が社会に散らばっているのであれば、米国への脅威はビン・ラーディンの死後も生き残る。
- 通常の軍事的報復を行うことは、ガンを広げるようなものだ。
Bernard Lewisは9月16日付けWashington Postで次のように述べた。
- 米国の支援要請にアラブが応えるか否かは、米国側の姿勢にかかっている。
- 問題の認識、連帯、政策定義と適用における決意を、米国が明確にすることだ。
ところで米国から具体的要請がない
米国が何を対象として、どのような国際協調を作り出そうとしているのか、そしてそれが今回の事件とどのように関連しているのかについて、必ずしも明確でない現時点で、仮に米国から要請があれば協力を惜しまないと発言する政府要人が何人か見受けられた。例えば、
犯人探し:イスラエル陰謀説
レバノンのヒズバッラー系テレビ局al-Manar TVが報じたところによると、イスラエルのHa'aretz紙は、金融センターで発生した事件なのにユダヤ人が死んでいないのはおかしいと指摘した。世界貿易センターでは4000人のユダヤ人が働いているが、事前にイスラエル政府から情報(命令)が入ったため、火曜日であるにもかかわらず会社を休んだ。(SANA, 2001.09.17)(注:ただし、この情報はシリア国営通信SANAがイスラエルの新聞ハアレツを引用した記事であり、原文を確認していない。)(Khaleej Time s, 2001.09.19)
犯人探し:非難の矛先はサウジへ?
今回の事件で、捜査の初期段階で容疑者の何人かがサウジ人であることが指摘されている。サウジ大使館が、米国当局によって逮捕されたサウジ人に弁護士を紹介するなど、可能な支援、便宜を与えていることを、国営通信が報じた。例えば(SPA, 2001.09.16)
(SPA, 2001.09.17)その1
(SPA, 2001.09.17)その2
(SPA, 2001.09.17)その3
(SPA, 2001.09.17)その4
しかし米国側には、過去の例から判断して、サウジ当局がどこまで捜査に協力するか疑問視する声がある。New York TimesのNeil MacFarquharは「反テロ戦争が対米関係を試す」と題する記事(2001.09.15)の中で次のように指摘した。(
- (最近逮捕されたばかりの)容疑者2人は、ジェッダとメッカで静かに座っていることが判明した。
- サウジ外交官に電話をかけたところ、米国政府から公式な協力要請はないが、(捜査を)支援することを強調した。
- ビン・ラーディン自身は金持ちの御曹司であったが、1980年代のアフガンでの反ソ活動のため、湾岸のほかの金持ち、米国政府から、一層の資金を集めた。
- しかしサウジ政府は1994年に彼のパスポート(サウジ国籍)を剥奪した。彼の実家も、彼と縁を切った。
- 1995年のリヤード爆弾事件でアメリカ人4人が死亡したとき、犯人はテレビで「ビン・ラーディンに会ったことがないし、彼のために働いたこともない」と自白した。FBIは犯人に直接面会することを要請したが、サウジ政府は犯人をさっさと処刑してしまった。
- 米国19人が死んだ1996年のアル・コバル爆破事件でもFBIは証拠品の確認を拒否された。サウジ当局と長期にわたり交渉した末やっと認められたのが、サウジの捜査官が容疑者を尋問するのを、米国捜査官がガラス越しに見物することだった。
- 2001年6月に米国の連邦裁判所がサウジ人13に、レバノン人1人を起訴したとき、サウジは自国の司法が裁くことに固執した。サウジ内相であるナーイフ王子は「我々には(米国の事情など)全然関係がないのだよ」と発言した。
- (公式筋は)サウジが親米国家であると強調するが、ディーワーニーヤ(有力部族、家族の長老を中心に集まる集会)では、米国がパレスチナを支持しないことについて強い憤りがある。
- アブダッラー皇太子と、軍の参謀総長は最近、(パレスチナ問題での対米不快感を表明するため)米国訪問を直前になって取りやめた。
関連して、米国の駆逐艦コールが2000年10月12日、イエメンのアデン港で爆破された事件の捜査が、現在イエメン当局との間で進められており、米国は反テロ連合の結成が、事件捜査の進展に寄与すると考えている。(al-Hayat, 2001.09.19)
サウジのファハド国王は9月17日、「王国は、テロと結びつく人物の存在を許さない」と語った(al-Hayat, 2001.09.18)。同日、王族はこぞって、国内の米国大使館、領事館を弔問した。
ところで、世界貿易センター北タワーに激突した容疑者としてFBIが見ているワリード・アル・シャフリーとワーイル・アル・シャフリーの2人が、インド駐在のサウジ外交官の息子である可能性が出てきた(Washington Post, 2001.09.18)。同外交官は1990年半ば、在米大使館の2等書記官であった。FBIの元・対テロ捜査官は、犯人の少なくとも一部がサウジ人で、サウジ政府が捜査に協力しない場合、二国間関係に大きな緊張が走る可能性がある、と語った。以下はWP紙からの大まかな引用である。
- 容疑者アル・シャフリー兄弟は、1990年代半ばに駐米・サウジ大使館の2等書記官だった人物の息子である。
- 外交官アフマド・アル・シャフリーはワシントン・ポスト紙記者に対し、自分はハイジャック犯の父ではないと語った。
- Boston Globe紙によると、同外交官は自分の2人の息子が事件に関わったか否かについて知らないと述べた。
- サウジの新聞(複数)は、アル・シャフリー兄弟が同外交官の息子であることは事実であると伝えている。
- ペンタゴンに突入した容疑者ハーリド・アル・ミザールとナウワーク・アル・ハムズィーもサウジ国籍である。
- ペンシルベニアで墜落した犯人の容疑者アフマド・アル・ハズナウィーは、サウジ・パスポートで米国に入国した。
- バーモント大学のGregory Gause氏は、ビン・ラーディンがこれだけ多くの偽造サウジ・パスポートを入手できるのか、あるいは多くのサウジ人をリクルートできることを示しており、興味深いと指摘。
- サウジ当局は、実在する人物の身分証明書が偽造されていると反論。
9月18日付けal-Hayatは、サウジ南部アル・アブハーにある自宅で外交官アル・シャフリー本人にインタビューした。外交官は「2人の息子が飛行機を操縦できるということを知らないし、英語を話せるとも思わない」「数日前、2人を探すためメディナに人を派遣したばかりだ」と語った。
9月18日付けのWashington Post紙で外交問題コラムニストのJim Hoaglandは、事件の捜査、真相究明の側面にほとんど触れずに、米国が今後実行すべき3点を次のように指摘した。
- ビン・ラーディンの拘束
- オイル・マネーの流れの捕捉:民間レベルでアラブの金持ちがテロリストに資金提供しているから。G7はこの件について、今月会合を持つべきだ。
- 中東和平問題の解決:将来における問題発生の防止
犯人探し:イラク説?
イギリスJane's Informationが出版するForeign Report誌は、イスラエルの軍事情報機関Amanからの情報として、イラク説を紹介した。同情報筋は、手元にあるのが断片情報のみで全体像が不明であることを認めつつ、今回の事件の黒幕が、レバノン人イマード・ムグニヤとエジプト人アイマン・ザワーヒリーである可能性があると語った。
ムグニヤはヒズバッラーの元諜報部長で、世界各地で反米、反ユダヤ・テロを繰り返してきたとされる人物である。1984年にベイルート駐在のCIA諜報員を誘拐、拷問、殺害した人物であると見られている。イスラエルの情報機関は、ムグニヤの残忍さと比べれば、思想面を担当しているビン・ラーディンは小学生だと形容している。
ザワーヒリーはアフガン国外で活動するビン・ラーディン代理人とされている。Amanは、イラク情報員サラーハ・スライマーンが過去2年の間、イラクとアフガニスタンの間を往復していたと主張している。この情報員は2000年10月にパキスタン・アフガニスタン国境近くで逮捕sれた。同イラク情報員は、ムグニヤとも接触したと報じられている。
イスラエルの情報機関は、こうした(断片)情報を踏まえ、6週間前に米国に対し、大規模テロ事件が予想されると警告していた。(Foreign Report, 2001.09.19)(イスラエルによる対米事前警告については、(Jerusalem Post, 2001.09.17)も報じた。)
ビズバッラー精神的指導者が反テロ連合参加を禁止するファトワ
イランがコントロールする、レバノンの民兵組織・政党ヒズバッラーの精神的指導者とされるファドラッラー師は9月18日、事件で死亡した無実の人々に対し哀悼の意を表明する一方で、米国の判断は証拠に基づいておらず、猜疑心に基づいていると批判した。そして、イスラームのいかなる国家、指導者、政治団体も、対ムスリムまたは対ムスリム団体の戦争をもくろむ米国を支援することは許されない、とするファトワ(宗教解釈)を発した。(Daily Star, 2001.09.19)
なお、ファドラッラー自身はヒズバッラーの指導部メンバーではなく、同組織の精神的指導者とされている。ファトワとは解釈であって、政治的命令、裁判所の判断とは異なる。
同じく9月18日、レバノン駐在の米国大使はレバノン外務省に対し、レバノンが国内にテロ組織を匿っていると非難した。この発言は、団体の名称を特定しない形式でなされたが、暗にヒズバラッラーを指していると受け止められている。レバノンが反テロ連合に参加する事について、米国政府から事実上難色を示されたものであり、レバノン政府は衝撃を受けている(Daily Star, 2001.09.19)。レバノン国内では、民兵組織は武装解除されるか、または非合法化されたが、ヒズバッラーだけは対イスラエル闘争を行う団体として武装を容認されたまま今日に至っており、同時に内政においては合法政党として認可されている。
その他雑記
- 各地でアラブ、ムスリムを狙った嫌がらせ、暴力、放火などが続く(al-Hayat, 2001.09.18)。
- 9月17日は、レバノンのサブラー・シャティーラ難民キャンプ虐殺事件の記念日(al-Hayat, 2001.09.18)。
- ペンシルベニアで墜落した容疑者の1人ズィヤード・ジャッラーハ(レバノン人)の家族は、彼がアフガンに行ったことがあるとの情報を否定(al-Hayat, 2001.09.18)。
- 仮に米国が報復軍事行動を取るときには、国連安保理決議が必要であるとする見解が複数の国から表明されている。例えば、パキスタン、エジプトなど。
本日までの資料
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本報告は、同時多発テロに関する中東諸国の論調、意見を整理した上で、可能な範囲で幅広く紹介することを目的としています。情報提供の迅速性を求める方は、ニュース・サイトなどを使ってご自分でお調べください。
(文責:伊丹 和敬)