センター長挨拶
日本と中東の関係というと、すぐに石油が思い浮かぶでしょう。日本は石油のほとんどを輸入に頼り、その約9割を中東に依存しています。1973年の第4次中東戦争をきっかけとする、いわゆる「オイルショック」は日本経済を大きく揺さぶりました。
それから半世紀近くを経過しましたが、いぜんとして日本は中東にエネルギーの多くを依存しています。しかし、その一方、アジアの新興国による中東進出が活発化し、エネルギーや貿易をめぐるアジアと中東、そして世界と中東との経済構造は大きく変化してきています。
日本の場合だけでみても、これまで経済面に偏重しがちだった中東諸国との関係は政治のみならず、文化面でも広がりを見せています。中東和平や湾岸危機・湾岸戦争、イラク戦争など中東におけるさまざまな紛争において、日本は大きな貢献を果たしてきたといえるでしょう。また、日本のアニメやマンガ、ビデオ・ゲームは、中東でも若い世代に積極的に受け入れられています。
しかし、他方で中東がずっと政治的・経済的に不安定な状態でありつづけていることも否定できません。9.11事件をきっかけに世界各地でテロが頻発し、多くの日本人が犠牲になっています。また、いわゆる「アラブの春」ではいくつもの国で体制が転覆しました。その後の混乱は新たなテロ、新たな紛争を生み出すなど、中東の混沌に収束の兆しは見えません。
わたくしたち中東研究センター(JIME Center)はオイルショック直後の1974年に中東経済研究所として設立され、中東で活動する企業等に向け、必要不可欠な情報をタイムリーに提供してきました。日本エネルギー経済研究所との合併後はその一部門として、豊富な現地経験をもち、中東の諸言語に通じた研究員たちが日々、情勢分析にあたっております。
中東の混乱は深まっているものの、わが国にとっての中東の重要性が下がっているわけではありません。中東研究センターとしましては、今後も時宜に応じて中東の政治経済に関する分析や政策提言をみなさまにお届けする所存でございます。みなさまの変わらぬご支援・ご指導を賜りますようお願い申し上げます。