学生時代、大量破壊兵器の開発計画を放棄し、経済制裁が解除されて国際社会に「復帰」したリビアに関心を持ち、現地に滞在しながら研究を行いました。2011年の「アラブの春」による内戦以降、リビアの不安定化が周辺国に波及する様子を目の当たりにしたことで、国際政治・安全保障の観点から研究を深めるようになりました。リビアは世界第 9位(アフリカ首位)の石油埋蔵量を誇る一方で政治・治安が不安定であることから、地域のエネルギー地政学に重要な影響を与えています。また、中東諸国の地政学的競争、テロ・治安動向、移民・難民問題など、日本からは見えづらい国際政治のダイナミズムを理解する手掛かりになると感じています。
2017年に日本エネルギー経済研究所中東研究センターに入所し、リビアを中心とした北アフリカ諸国の政治・経済動向、中東・北アフリカ地域のテロ・治安情勢を主担当としています。最近は、エネルギー地政学・エネルギー安全保障の観点からも研究を進めています。2021年から2023年まで、在リビア日本大使館にて書記官として勤務し、政務・経済・経済協力など幅広い業務を担当しました。
青山学院大学、東京外国語大学、東洋大学、東洋英和女学院大学で、中東現代政治、エネルギー政策、国際関係論、国際安全保障に関する講義を担当しています(2024年10月現在)。これまで、国際連合大学、外務省、国際交流基金、米国務省、サントリー文化財団、その他学術・民間財団の助成を受けた研究プロジェクトを企画・実施してきました。
慶應義塾大学総合政策学部卒業。同大学院政策・メディア研究科にて修士号、博士号取得。
Researchmap
書籍
- 国際経済連携推進センター『揺らぐ国際秩序と混迷する世界: 崩壊寸前の戦後国際規範』産経新聞出版、2024年8月(「中東の政治情勢とエネルギー地政学~『10月7日』以降のエスカレーション・リスク~」)
- 五十嵐隆幸、大澤傑(編著)『米中対立と国際秩序の行方:後退する民主主義と拡大する権威主義』東信堂、2024年6月(コラム「米中対立とエネルギー問題」「米中対立と移民・難民問題」「米中対立と気候変動・災害問題」)
- 日下部尚徳、本多倫彬、小林周、髙橋亜友子(編著)『アジアからみるコロナと世界:我々は分断されたのか』毎日新聞出版、2022年5月
- 阪本公美子、岡野内正、山中達也(編)『日本の国際協力 中東・アフリカ編』ミネルヴァ書房、2021年8月(「対リビア援助:内戦後復興支援に向けた課題」)
- 西尾哲夫、東長靖(編著)『中東・イスラーム世界への30の扉』ミネルヴァ書房、2021年7月(「『アラブの春』と不安定化の拡散」)
- 末近浩太、遠藤貢(編)『グローバル関係学4 紛争が変える国家』岩波書店、2020年9月(「紛争下のリビアにおける国家観――『断片化』と統合の狭間で」64-82頁)
- 落合雄彦(編著)『アフリカ安全保障論入門』晃洋書房、2019年3月(小林周・保坂修司「シャバーブ」118-127頁)
- 山内昌之(編)『中東とISの地政学』朝日新聞出版、2017年2月(「リビアの地政学リスクとイスラーム過激派の動向:「非統治空間」への着目」119-146頁)
主な論文
- 「北アフリカの政治・エネルギー情勢~期待・課題・国際政治との連動~」『中東動向分析』第23巻第4号、2024年7月
- 「日本と中東:エネルギー安全保障を超えた深化」コンラート・アデナウアー財団『地政学時代の日本―外交・安全保障政策の新たな潮流―』2024年6月
- 「北アフリカの政治情勢:国際政治との連動」『アフリカ』2024年夏号、2024年6月
- “Japan Beyond Asia: How the Middle East could be integrated into the Indo-Pacific Geostrategy,” KGRI Working Papers, Keio University, May 2024.
- 「アフリカにおけるイスラーム過激派の動向」『治安フォーラム』30号6巻、2024年5月
- 「ガザ情勢が及ぼすエネルギー供給への地政学的影響 ―中東のエスカレーション・リスクと紅海地域の不安定化」笹川平和財団、国際情報ネットワーク分析 IINA 、2024年4月
- 「中東の政治情勢とエネルギー地政学〜『10月7日』以降のエスカレーション・リスク〜」国際経済連携推進センター、2024年3月
- 「中東地域大国をめぐる政治ダイナミクス-10月7日で変わったもの、変わらないもの-」『Security Studies 安全保障研究』6号1巻、2024年3月
- 「露ワグネルのアフリカにおける動向~プリゴジンの死亡が与える影響~」『治安フォーラム』第30巻第1号、2023年12月
- 「座談会:再編続く 中東情勢の現在地」小林周、田中浩一郎、中村覚、江﨑智絵『外交』第81巻、2023年9月
- 「露ワグネルのアフリカにおける動向:『プリゴジンの反乱』はどのような変化をもたらすか」笹川平和財団、国際情報ネットワーク分析IINA、2023年7月
- 「プーチン政権『対アフリカ関与』の橋頭保、ワグネルの知られざる利権と影響力の行方」新潮社Foresight、2023年7月
- 「リビアの政治・経済・エネルギー動向~不透明化する政治プロセスの一方で進むエネルギー・経済開発~」『中東協力センターニュース』2023年6月
- 「混迷するリビア情勢と日本大使館の挑戦:天寺祐樹臨時代理大使に聞く」笹川平和財団、国際情報ネットワーク分析IINA、2023年5月
- 「変動する国際秩序とアフリカの地域秩序――アフリカは「米中対立」にいかに巻き込まれるのか」『防衛学研究』68号、2023年3月
- 「大統領・議会選挙延期後のリビア情勢――「リビア・トラップ」からの脱却に向けた課題」『中東研究』546号、2023年1月
- 「ロシア「ウクライナ侵略」で高まるリビアの戦略的重要性」新潮社Foresight、2022年5月
- 「リビアが直面する「首相が2人」の異常事態(下)一致できない国際社会」新潮社Foresight、2022年5月
- 「リビアが直面する「首相が2人」の異常事態(上)大統領選挙はなぜ延期されたのか」新潮社Foresight、2022年5月
- 「中東発エコノミック・ステイトクラフトの検証――変化する域内安全保障の中で」『国際政治』205号、2022年2月
- 「大統領選選挙延期に揺れるリビア」『外交』71号、2022年1月
- 「プラットフォームとしてのイスラーム研究・教育機関:リビアにおける世界イスラーム・ダアワ協会の役割」『アジア・アフリカ言語文化研究』102号、2021年9月
- 「リビアの石油開発:期待と課題」『エネルギー・資源』42号4巻、2021年7月
- 「Covid-19と変化する「国際援助」:中東諸国の動向に焦点を当てて」笹川平和財団「コロナ対応から考えるアジアと世界」2021年5月
- 「リビア紛争の展開と地中海東部、紅海沿岸情勢との連動」日本国際問題研究所、2020年11月
- 「緊張高まるリビア紛争Ⅱ-欧米の分裂が妨げる安定化」笹川平和財団、国際情報ネットワーク分析IINA、2020年11月
- 「NATOの“裏庭”リビアに橋頭堡を築くロシア」『Wedge』2020年9月
- 「緊張高まるリビア紛争Ⅰ-トルコ、ロシアの軍事介入」笹川平和財団、国際情報ネットワーク分析IINA、2020年8月
- 「ジハード主義を読む(10)中東におけるISの動向」『治安フォーラム』第26巻第9号、2020年8月
- 「『2つのショック』に襲われる中東諸国――グローバルなコロナ蔓延と石油価格下落の影響」笹川平和財団、国際情報ネットワーク分析 IINA、2020年7月
- 「複合的問題としての人の移動――安全保障問題との交差」『シノドス』2020年7月
- 「東地中海の天然ガス開発〜地政学的競争とエネルギー開発競争の連鎖〜」『中東動向分析』Vol. 19, No. 3、2020年6月
- 「中東情勢と日本のエネルギー安全保障」『Security Studies 安全保障研究』2-2巻、2020年6月
- 「ジハード主義を読む(9)アフリカにおけるISの動向」『治安フォーラム』26巻7号、2020年6月
- “Challenges for Japan in Integrating the Middle East and Africa into the Free and Open Indo-Pacific Strategy/Vision,” the Changing Security Environment in the Middle East and the Role of the U.S. – Japan Cooperation, JIME Center- the Institute of Energy Economics, Japan, April 2020.
- 「リビア――各国の介入で分裂が続く」『外交』Vol.60, 2020年3月
- 「2019年のアフリカにおける政治・治安動向」『年鑑 海外事情2020』拓殖大学海外事情研究所、2020年3月
- 「ジハード主義を読む(8)バグダーディー殺害以降のISの動向」『治安フォーラム』26巻4号、2020年3月
- 「流動化が進む北アフリカの政治情勢」『海外事情』67巻6号、2019年11月
- 「世界の主要産油国と日本の輸入原油(13)リビア」『ペトロテック』42巻、2019年8月
- 「『インド太平洋構想』と中東・アフリカ地域」『中東動向分析』Vol. 18, No. 4、2019年7月
- 「『リビア国民軍』のトリポリ進軍によって緊迫するリビア情勢」『中東動向分析』Vol. 18, No. 2、2019年5月
- 「2018年のアフリカにおける政治・治安動向」『年鑑 海外事情2019』拓殖大学海外事情研究所、2019年3月
- 「中東・アフリカからの非正規移動とEUの外交・安全保障政策」『国際安全保障』46巻4号、2019年3月
- 「リビアを中心とした北アフリカ地域の治安・テロ動向」『インテリジェンス・レポート』123号、2018年12月
- 「リビアのエネルギーをめぐる政治動向:産油量回復の一方で高まる治安リスク」『中東協力センターニュース』43巻9号、2018年12月
- 「中東諸国の対アフリカ戦略と変化する地域安全保障:『カタル危機」以降の動向に焦点を当てて」『中東動向分析』Vol. 17, No. 6、2018年10月
- 「『断片化』するリビア情勢と大統領・議会選挙:選挙は実施可能か、安定をもたらすのか」『中東研究』533号、2018年9月
- 「リビアにおける『非統治空間』をめぐる問題とハイブリッド・ガバナンスの可能性」『KEIO SFC Journal』Vol. 18, No. 1、2018年9月
- 「リビアにおける『非統治空間』の発生:交錯する過激主義組織と人口移動」『反グローバリズム再考‐国際経済秩序を揺るがす危機要因の研究:グローバルリスク研究会』日本国際問題研究所、2018年4月
- 「リビアの政治動向:国内和平の停滞がもたらすISの再台頭と石油生産の不安定化」『中東動向分析』Vol. 16, No. 7、2017年11月
- 「政変後リビアの石油資源をめぐる政治動向」『中東動向分析』Vol. 15, No. 11、2017年3月
- 「移民の『経由地』と『目的地』としてのリビア:内戦後の情勢流動化が与えた影響」『中東研究』528号、2017年1月
- Amane Kobayashi, and Guy Caruso, "Middle East and North Africa Political Risk Assessment: Implications of Sustained Low Oil Prices", RW Political Risk Newsletter, Vol.12, Issue 1, Robert Wray PLLC, March 2016.
- 「不安定化の『連鎖』:リビアから『イスラーム国』への戦闘員流出」『中東研究』522号、2015年1月
- 「リビアにおけるイスラーム主義組織展開の歴史的背景」『中東研究』517号、2013年6月
- 「新生リビアの国民議会選挙と今後の展望」『中東研究』515号、2012年10月