(速報、2000.02.06)

 


Saudi Aramcoが中立地帯の油田と施設に投資する会社設立のため手段を講ずる
日本の提案である融資は、国際協力銀行が保証する融資ではない

al-Riyadh, 2000.02.06, p. 3 (p. 1に同じ記事の導入部分掲載)
アキール・アル・アンズィー記者
(al-Hayat, 2000.02.06, p. 11経済面に同じ内容で短めの記事がありました)

 Saudi Aramco社は、2月27日の終わりに、王国の利益を管理し、中立地帯のうち王国に属する地帯の油田と施設を接収する子会社を設立するための準備作業を始めた。同地域には、1957年7月に王国との間で調印した利権協定に基づき、日本のアラビア石油株式会社が42年間投資してきた。しかし、日本側が王国の条件を満たす提案を示さなかったため、あるいは、同社との関係更新に必要な見返り --- つまり同社が中立地帯のサウジ側にある石油とガスの埋蔵(資源)および施設から得ることが確実な利益、さらに現在の生産量の穏当な増加および王国が同社に対して与えてきた利幅の改善に対する見返り --- としてたとえ部分的であれその代替としてサウジが提示したものに日本が同意しなかったため、同社の契約更新に向けたサウジと日本の交渉は袋小路にはまった。

 消息筋は、日本の交渉者は王国の国益を無視しているとし、その事実として、王国のインフラを利用して天然資源を開発しておきながら、交渉を通じて国際協力銀行が保証しない融資を提案し、王国に対外債務の重荷を背負わせ(ようとす)ること指摘している。高いレベルで構成されるサウジの交渉団はこれを拒否し、日本の交渉団に対し、王国の国益を考慮に入れ、両国国民に利益を還元する共同投資の目的を実現するよう要求した。

 王国政府がアラビア石油株式会社との関係更新の条件としたものは、以下のように要約できる。日本におけるサウジ原油のシェア拡大と、王国への日本の投資拡大である。

 王国がこれらの条件を付けたとき、以下の諸点を考慮した。(1)(中立)地帯における原油とガスの確認埋蔵量を増やすこと。(2)王国の生産政策が、OPEC生産割り当ての範囲で王国の石油収入を極大化する目的をもって軽質油の生産拡大を目指すとき、アラビア石油株式会社との関係更新が、生産コストは同じでありながら販売価格が安い重質油の生産拡大という結果になるだろうということ、つまり、王国にとっては収入減少を引き起こすだろうということ。

 日本がサウジ原油の買い取りを増やす件については、(サウジ)石油省は日本の通産省に対し、日本の会社(複数)がアラビア石油株式会社の更新期間と同じ期間、150万b/dを買うよう薦めた。同様にサウジ側は日本に対し、追加して50万b/dの買い取り増加ができないかどうか提案した。そして石油の供給不足を引き起こす緊急時には、王国が日本に対して優先的に供給保証をすることを提案した。これは、購入量の増加であれ追加分の増量であれ、日本への販売増加の提案である。そして、サウジは緊急時に日本に対し契約履行を保証し、これから合意する契約の期間、原油供給を保証して日本の需要に応じるものである。そして、この販売増加は、日本市場における原油販売増加を通じて、王国の利益を確実にする。なぜならば、アジア市場における原油価格は、他の市場に比べ高いからである。従って、このような提案は、両国にとり肯定的な側面を実現する。

 しかしながら、日本政府はサウジの石油鉱物資源省が提案したものに返答せず、その代わりに、日本の購入増加分のうち、5年の間10万b/dの一定量についてSaudi Aramcoへの前払いを提案した。これでは要求されていることが実現されていないため、受け入れることはできない。

 投資増加について、日本の交渉団は、主な2プロジェクトに集中した。

 一つは、アル・カフジー地区における石油化学工場の建設で、これはアラビア石油が新しい協定の主要な一部として同地区で開発と生産を行うガスを利用するものである。これについて、現在同社との協議が行われている。

 もう一つは、日本側が資源と貨物をアル・クライヤート市からアル・リヤード市に運搬するための鉄道敷設に投資することである。この鉄道は既存のアル・リヤード --- アル・ダムマーム(ダンマン)線に接続し、最後にアル・ダムマームからアル・ジュバイル工業都市に達する。

 このプロジェクトは、ハズム・アル・ジャラーミードに豊富に存在するリン鉱石の開発、および東部に多い硫黄と合わせて大きな肥料産業を立ち上げるのに極めて有効であるとみなされている。それは王国を世界最大の肥料生産国にすると見込まれている。また同様に、ボーキサイトは、重要な基幹産業とされるアルミニウム産業の原料である。東部州で豊富なエネルギーは、この産業の成功を助けるだろう。

 この鉄道はまた、次の諸都市 --- アル・クライヤート、アル・ジャウフ、ハーイル、アル・カシーム、スダイル、アル・リヤード --- の間を走る地域の間で農産物や工業製品の輸送を促進するだろう。これは、輸送と鉄道メンテにかかる費用の軽減にも役立つだろう。また、この鉄道は、将来鉄道が通る地域において新しい工業都市の建設をも促すだろう。

 鉄道の利用形態は、70%が資源運搬に、30%がその他の貨物運搬と想定されているが、時間が経ち新しい工業都市が成長し、輸出品や輸入品を運搬する必要性が生じるにつれ、その他の貨物が徐々に減少すると見られる。

 重要なインフラ整備事業の一つとしてこの鉄道が持つ重要性と必要性は、鉄道が結ぶ地域において鉱山開発とそれに関連する工業、農業、サービス産業の発展の礎石を築くことである。これらは、鉄道建設なしでは実現が困難である。

 サウジ石油省の立場は基本的に、商業プロジェクトとして日本が投資を通じて鉄道を実現することに集約された。建設コストと投資収益を回収するまで、鉄道建設と運営は日本の会社(複数)が行う。

 しかし、日本側は、プロジェクトに採算性がないと考えた。その直後、王国は、中立的な立場として世界銀行に対し、鉄道プロジェクトと、主要産品として産出する鉱物を利用した鉱山、工業など関連プロジェクトのフィージビリティー・スタディーをするよう依頼した。世銀の報告書は、もし、王国政府がプロジェクトを非課税扱いにすれば --- そしてサウジ側は日本側に対しそうする用意があると伝えたのだが --- この計画に経済性があると確認した。

 ところが、日本政府はその後、日本には投資(希望)者がいないため、(政府が)このプロジェクトへの投資を希望すると釈明をした。日本側は、商業ベースの金利付きの融資を含む提案を行った。協議が、日本側による一定量のサウジ産原油購入増加に達したとき、サウジの石油鉱物資源省は、その代わりに、投資プロジェクトとしてではなく、日本側が日本の負担で日本企業(複数)により鉄道を建設したうえ王国の鉄道公社に譲渡するか、または、日本側が約21億ドルと推定する建設費用を支払うよう提案した。このプロジェクトは、アラビア石油株式会社との関係更新に調印することへの追加(ボーナス)とみなされる。そして、これは、新しい利権調印への追加(ボーナス)として、国際石油契約における慣行である。

 この計画は、日本政府が同意すれば、王国が原油販売増加から得る利益と同等の金銭的利益を将来生むだろう。どちらのケースであれ、両国のうち一方が、アラビア石油株式会社との関係更新の結果生じる収入の減少を王国に補償することに参加するであろう。

 従って、王国政府の交渉の立場は、基本的に、日本の提案を査定するというものである。つまり、同社との関係更新の結果期待される王国の収入減少と比較した上で、日本の提案に示される金額が補償額として十分であるかどうかを見るのである。

 情報筋は、アラビア石油株式会社の更新拒否は、王国と日本の間に存在する通商関係の変化を意味しないことを確認している。アラビア石油株式会社が日本のオペレーター(複数)に対して販売している原油量については、(中立)地帯で王国の利益を接収し次第、Saudi Aramcoが日本の会社に販売を行う。同様に、王国と日本の間にあるその他の通商側面は継続し、同社の更新拒否問題の影響は受けないだろう。また、サウジ日本関係は進展する。合弁事業(複数)、数多くの商品について経済利益、通商関係がある。その一つは自動車であり、王国は主要な(よく売れる)市場とみなされている。電気製品やその他も同様である。

 同社の更新について王国政府が求めた諸条件を日本側が実現できない理由として、日本政府は国民の税金を、鉄道を王国政府にプレゼントすることに費やすことはできないとした、日本の通産省高官の発言は、正しくない正当化である。なぜならば、日本政府が示した提案は、いくつかの融資について日本政府から国際協力銀行への利子補給、融資対象プロジェクトの経済性調査のための2億ドルが含まれているからである。これら日本政府が提供する支援は、日本国民の税金から支払われる。従って、前述の正当化の原則は受け入れることができない。

 王国は日本にプレゼントを要求したことはない。日本側が受け取る利益と比してふさわしい補償をするよう、王国が更新の結果被る費用(損害)の一部を補償するよう、求めたのである。

 天然資源を国家建設に活用する政策と調和させる形で有効利用することを望み、王国政府は、現行の協定が終了するときに事業を行う代替措置を講じた。それは、Saudi Aramcoの新しい子会社が王国を代表し、アラビア石油株式会社が兄弟国クウェートを代表するという合同操業協定に基づき、Saudi Aramcoが(中立)地帯における王国の利益を統括する子会社を設立するものである。

 アラビア石油で働く約1,300人と推定されるサウジ人従業員は、Saudi Aramco社の新しい子会社に全員所属し、新しい組織のなかで彼らの全ての利益と職業上の権利は保持される。

 日本政府は、アラビア石油株式会社は民間部門であるとして、同社が独自にサウジ側と協議できるとしながら、同社の代理として交渉を統括し、また、日本側は協議を長期化させ、利権から手を引き、多くの分野で長年に渡り発展させてきたサウジ日本関係にふさわしくないメディア発言(media language)を用いる意図があったことは特筆できる。

 王国は今年初め、石油専門家約150人のチームを結成し、中立地帯の王国に戻る部分にあるアラビア石油社の施設を査察し、油井とパイプラインを調査した。そして調査チームは、これら施設が悪い状態にあり、長期間メンテされていないと指摘する報告書を提出した。

 アラビア石油株式会社の設立の歴史は1956年にさかのぼる。1957年7月に王国と初めての契約に調印し、王国が会社の10.9%を所有する。同社は1958年に王国とクウェートの間で分割される地帯の王国領域で初の地質調査を行った。そして1959年7月深さ1479フィートで天然ガスを発見した。1960年1月には深さ4900フィートで石油を発見し、最初の油井は平均6,000 b/dで噴出した。同社は現在、原油を25万b/d生産している。同社がアル・カフジー、アル・ダッラ、アル・フート、アル・ルウルウで掘削した油井の数は250以上で、うち25は操業に成功しており、11は使われていない。


(翻訳:伊丹 和敬)