(速報、1999.07.23)
日本は貯蔵計画でサウジから好感を得ることに失敗
(Japan fails to impress Saudis with stockpile move)
FT Middle East Energy, 23 July 1999, p. 2
日本の通産省は、中立地帯におけるアラビア石油の利権延長でサウジを説得するため、最後の努力をしているようだ。通産省の交渉団がサウジにおける日本の投資増大の方策を説明するため、リヤードに入っている。サウジは、これは,サウジとクウェートで半分ずつ所有する中立地帯においてアラビア石油が28万b/d生産する,40年になる契約を更新する前提条件だと言っている。
さらに相手の気を引くため、通産省は,原油備蓄を増やす可能性を発表することで、サウジの対日石油追加販売の見込みをちらつかせた。しかしながら、何一つ、サウジ政府を印象づけるのに役立っていないように見える。サウジ政府は、Saudi
Aramcoから次の2月に期限を迎える協定を破棄するよう圧力をかけられている。
通産省の新しい提案は、鉱物資源が豊かな北部地域とペルシャ湾岸の港や工業地帯を結ぶ鉄道建設を支援することへの合意など、これまでに交渉の過程で提示された提案をいくつか含んでいる。
また、日本の戦略石油備蓄を3150万バーレル増やし3億4600万バーレルに増やす提案もある。通産省は、これは,日本の緊急備蓄をIEAのガイドラインに一致させることを意図した、定例的な増加であると表現している。しかし,いくつかのサウジ筋は、彼らが追加購入する原油の大半あるいは全量が,恐らく特別な1年契約でSaudi
Aramcoから購入されると信じるに至ったと語っている。
日本は、サウジがこの対日追加販売を,対日輸出が落ち込んでいるときに,好意をもって受けとめることを希望しているかもしれない。
輸入国 |
1999年1Q |
前年同期比 |
UAE |
1,290 |
+2.4 |
サウジ |
895 |
-10.1 |
イラン |
595 |
+16.7 |
カタル |
405 |
+8.0 |
オマーン |
310 |
+51.2 |
インドネシア |
255 |
+15.9 |
その他 |
960 |
-14.3 |
合計 |
4,710 |
-0.8 |
しかし、サウジは現在のOPEC生産協定が軌道に乗っている限り、日本への供給を増やすことにあまり関心がない。Saudi
Aramcoは日本向け8月積み分を11%削減したばかりである。これは、7月分を14%削減したあとのことである。
日本は、アジアでより多くの原油を買うと提案している唯一の国ではない。韓国は,新ターミナルと貯蔵施設が完成したのを受け、現在から2006年までの間に168
milバーレルの追加購入を発表したばかりである。
しかしながら、日本の貯蔵計画は、アラビア石油交渉と釣り合わないことになりそうである。Saudi
Aramcoにとりより関心があることは、日本の石油市場全体の状態である。そして、それは際立って後ろ向きである。
1999年1Qにはバラ色の経済データがいくつかあるものの、日本の石油需要はほとんど伸びていない。石油需要は今年約5万b/d上昇したが、輸入は実際には4万b/d減ったのである。
さらに悪いことに、日本の石油精製者は,Saudi
Aramcoによって設定される価格フォーミュラに基づくサウジ原油の長期契約への依存を減らし,より価格の安い西アフリカ、北海、米国からのスポット・カーゴに乗り換えたいとの兆候を見せている。例えば8月の間、日本の精製会社は、5万b/dのAlaska
North
Slope原油の輸入に合意した。日本の資金繰りに苦しむ精製者が,操業コストを引き下げる方策を真剣に模索するにつれ、新しい、主に非中東の供給者を探すこの傾向は続きそうである。
日本の石油産業の高コスト,低または無収益は,しかしながら、アラビア石油の野望にとってもまた、死の前兆に聞こえるかもしれない。日本の石油会社に海外での生産を奨励する通産省の政策は、多くの場合、多くの高コスト油田の獲得と低収益をもたらしてきた。アラビア石油自体が昨年は$
15
milの赤字を出しており、もし新しい鉄道とその他の対サウジ支援策が追加されれば、日本にとり将来の中立地帯における生産の本当のコストは、本当に非常に高いものにつく可能性がある。通産省自体が、高すぎる対価を払い過ぎたと認識し、アラビア石油の利権が2000年に終了するのがより合理的な選択であるとまもなく決めるかもしれない。
(翻訳:伊丹 和敬)