2015年12月21日

情勢分析報告会資料

2015年12月21日 情勢分析報告会

11⽉総選挙後のトルコ情勢

発表者

柿崎 正樹
 トルコでは6月総選挙後の連立政権樹立に向けた与野党協議がまとまらず、11月1日に出直し総選挙が実施された。11月選挙ではAKPが国会過半数を回復し、11月末にダウトオール首相率いる単独政権が成立したことで政治の安定性は一応確保された。しかしながら、トルコを取り巻く国内外の情勢は緊迫しており、新政権はさまざまな課題に直面している。本報告では、11月総選挙を総括した後でダウトオール新内閣の評価、国内政治情勢とロシア関係および対「イスラム国」外交について考察し、最後に選挙後の経済状況について報告した。
 7月以降トルコでは「イスラム国」によるテロやトルコ政府との停戦を破棄したPKKと治安当局との衝突が続き、治安情勢が極度に悪化した。こうした中で出直し選挙が行われ、安定政権に治安回復を求めた有権者の多くが与党AKPに投票した。その結果AKPは国会(定数550)で317議席を確保、得票率は49.5%と圧勝した。6月選挙でAKPを追い込んだクルド系の人民民主党(HDP)はかろうじて10%の足きり条項を乗り越えたものの、獲得議席数は21減の51議席に終わっている。
 選挙後に成立したダウトオール新内閣の閣僚人事には、エルドアン大統領の影響力が色濃く反映されている。大統領の娘婿であるベラト・アルバイラクがエネルギー天然資源相、大統領の「側近中の側近」であるビナリ・ユルドゥルムが運輸海事通信相に就任したほか、内相や法相といった重要ポストにも大統領に近い人物が就任した。そのため、ダウトオール内閣は実質的には「エルドアン内閣」との見方が強い。
 新政権は今後大統領制への移行を実現するために野党との協議を開始し、改憲案を国民投票に諮りたい意向を強く示している。ただし野党は1980年軍事クーデターにより成立した現行憲法の改正自体には賛成するものの、大統領制の導入には反対しており協議は容易には進まないだろう。一方国内ではトルコ南東部でPKKおよびその青年組織と治安当局との衝突が続いており選挙後も情勢は安定する気配を見せていない。また、シリア北部における「イスラム国」とクルド人との戦いがトルコにも波及している。
 こうした中、11月24日にはシリア北部でトルコ軍がロシアの爆撃機を撃墜する事件が発生し、ロシアは軍事的対応と同時に経済制裁を矢継ぎ早に打ち出しトルコからの謝罪を要求した。トルコは米国の支援を得ながらシリア北部に安全地帯を設置することで一定の影響力確保を目指してきたが、ロシアの軍事プレゼンスが強まったことで難しい状況に追い込まれた。
経済状況に関しては、2015年全体の成長率は2%後半になると予想されるものの、上昇傾向にある失業率とインフレ率、さらには地政学的リスクやシリア難民問題などが今後のトルコ経済における懸念材料といえる。